徒然日記

片岡正人という人が「市町村合併で「地名」を殺すな」という本の中で、合併による
新市町村の名称決定の基準試案を示しています。これに従って上記６市町で合併
した場合の名称を考えてみましょう。

１．合併する地域全体をほぼ指し示す広域名称や通称
実はこれこそが「湘南」であり、意外と「湘南市」というのはいいネーミングであった
ことがわかります。湘南の定義は多様ですが、藤沢市、茅ヶ崎市はどう定義しても
これに含まれますし、大磯は現在はともかく湘南発祥の地ですからね。

２．古代や中世など過去に用いられた地域全体を指し示す地名
旧郡名などがこれに該当します。ただ相模川の東は高座郡、西は中郡（あるいは
大住郡と淘綾郡）でしたので、全体はカバーできません。

３．合併地域の中に存在する象徴的な存在
川や山、寺社仏閣が例に出されています。相模川はむしろ断絶の象徴ですから
不適切でしょう。現在国道１号線である東海道、これに並行する東海道線ならば
地域を完全にカバーしていますが、これらは概念が広域すぎて太平洋市のような
僭称地名になってしまいますな。
後は相模湾くらいですが、相模湾市とか相模灘市じゃ変ですね。

４．ここまでで適切な名称がない場合
４ａ．郡名や地方名に方角をつけて示す
郡名は上記２の通りダメなので、南相模市とか相模南市とかになるのでしょうか。
縮めて南相市とか。逆にして相南市だと語感が良さげですが、相南は相模原市の
南部あたりに既に存在する地名です。

４ｂ．合併する市町村のうち代表的な都市名
中核都市名継承原則というヤツですが、この枠組みだと藤沢市と平塚市が規模
的にほぼ拮抗しているため無理でしょうな。

４ｃ．規模に大きな差がない場合は連称する
「藤沢平塚市」とか「平塚藤沢市」ですか。茅ヶ崎市が離脱しそうな名前ですね。
語呂も悪いし、２市の対等合併ならともかく、６市町合併では無理があるような。
２と併用して、中郡の中と高座郡の高座を連称すると「中高座市」。なんかくどい
ですかね。縮めて「中高市」とか、あるいは「中座市」とか。なんか途中でいなく
なりそうです。

５．まったく新しい名称をつける場合は、安易な瑞祥地名や軽薄な名称を避ける
「湘南市」がこの「軽薄な名称」にあたる気がしてならないのですが。ただ新しい
言葉ではありませんし、全国的な知名度を考えても地域特定機能はずば抜けて
いるんですよね……。

６．合併する旧市町村の名称は町名や字名などにできるだけ残す
湘南市茅ヶ崎区みたいな感じですね。ただし元が合成地名や安易な名称だった
場合は無理に残さずとも良いとか。
つか６は新市名の基準じゃないような……。

こうやって考えてみると、知名度としても地域特定機能としても本来の意味を考え
ても、湘南市というのは良いネーミングだったことがわかります。ネーミングありき
ではなく、合併を先に決めてから合理的な市名決定プロセスを経て「湘南市」と
していたら、無事に合併できていたかも知れませんね。平塚市の強引なイメージ
戦略さえなければなぁ。

ちなみに現在、当該６市町の人口合計は100万人を超え、先日政令指定都市と
なった相模原市を上回ります。合併が実現していたら政令指定都市になっていた
ことは予想に難くありません。
政令市になった場合の区割りや区名についてもいずれ考えてみたいところです。