住民投票への民意の反映

小平市住民投票は不成立 都道計画見直し、投票率50%達せず

この件、市内でも地域によって温度差があったり、道路を利用するのは主に市外の人であったり、可決しても法的拘束力はなかったり、市が可決に応じて計画を見直そうとしても都が応じるとは限らなかったりといろいろ問題はあると思います。
ただここではこの案件自体ではなく、住民投票の仕組みについて考えてみたいと思います。

今回の住民投票は、投票率が50%を超えなかった場合は不成立とし、開票すらしないのだそうです。これは一見高圧的な措置のように見えますが、よく考えてみるとある程度の合理性を持っていると思います。

今回のように現状に異議を唱えて何かのアクションを要求する住民投票では、賛成派と反対派に温度差があることが考えられます。賛成派は積極的に投票を行い、反対派は消極的反対であるが故にそもそも関心が低く投票に行かないと言うことが発生し得ます。

小平市の有権者数は14万人だそうです。仮に賛成者がこの内4万人だとすれば、有権者数の半分どころか1/3にも満たない少数派と言うことになります。
しかし今回の投票率は約35%。投票総数は5万程度です。賛成派が全員投票していれば、投票総数の8割を占める圧倒的多数で可決と言うことになってしまいます。これで正しく民意を反映していると言えるでしょうか。
このような状況を防ぐため、投票率に条件を設けるというのは理にかなっていると思います。

逆に反対派の方がより積極的に投票を行うと何が起こるでしょうか。反対の票が3万ほどに増加すると、投票総数は7万人を超えて投票率が50%の要件を満たしてしまいます。うち賛成が4万、反対が3万ですから、やはり可決と言うことになってしまいます。

反対派の投票戦略としては、賛成派以上の投票を行って住民投票成立の上で否決を目指すか、逆に投票を行わず住民投票不成立を目指すかのどちらかと言うことになります。しかし反対派全体としてどちらを目指すか明らかにしなければ意味がありません。個々人について言えば、どちらの戦略を採るのが有利なのかを判断出来ないことになります。
(今回は音頭を取って不投票を目指した運動があったようです)

うっかり中途半端に反対票が集まって、「投票が有効で可決」という状況になってはたまりません。そういう意味では、反対派は一律に「投票を行わない」とした方がいいのかも知れません。賛成派だけで投票が成立するということは、有権者の過半数が賛成していると言うことですから、それならば民意を反映します。

賛成派はほぼ全員が投票に行かないと行けないのに対し、反対派は投票に行かなくていいばかりか無効票も単に興味がないという票も全て取り込めるということで、かなり賛成派に厳しい仕組みだと思います。ですが先にも述べたように、この手の投票は「現状を変えたい」という目的で行われるわけですから、賛成側に高いハードルを課し、反対側(現状維持容認派)を有利にするというのはある意味合理的なのかも知れません。

こうした問題が発生するのは、投票結果と有権者全体の民意とに乖離があることが原因です。有権者全員が投票を行うとか、賛成反対両サイドに温度差がなければこのようなことは起こり得ないのですが。
投票を容易にして、消極的反対の人でも意思表示しやすくすると言うことがポイントなんですよね。今回は「投票を行わない」ことが反対の意思表示とすることで解決していますが、ネット投票の導入などでも解決できるかも知れませんね。