大学生の数学力は低下しているか

大学生4人に1人、「平均」の意味理解せず

日本数学会で行った大学生数学基本調査にて、大学生の数学力が低下して
いるとの報告が行われました。
調査対象となっている「入学直後の大学生」がゆとり教育を受けた世代で
あるので、このことと結びつけて考えるという筋のようです。

ゆとり教育が不十分なものであったことは同感ですが、この調査をもって
数学力の低下を指摘することにはやや無理がある気がします。そもそも、
今回の調査が1回目なのに経時変化が捉えられるわけがないでしょ。
それから、問題を見てみると結構難しいと思いました。もっと上の世代に
調査してみても、たぶん大差ない正答率になるんじゃないかなぁ。

というわけで、問題別に考察してみました。

【調査で用いられた問題】

問題1-1

(2)を間違えるのは論外として、(1)は平均が分布の中心・中央とは
異なることを問う問題です。平均の計算式を考えれば上下均等になる保証
などないことはわかると思いますが、試験などで「平均点」を過剰に意識
させられていることが勘違いの元かも知れませんね。
ちなみに中心は中央値(メディアン)です。平均は中心と言うより重心と
言った方がしっくり来るかも。上下への離れ具合に影響されますから。
(3)は最頻値(モード)との違いがポイントです。出題が「身長」です
から、等質な集団であればそうそう変な分布になることは考えにくいので、
そこに引っ張られて間違えた可能性がありますね。

この問題の正答率をもって「平均の意味理解せず」と結論づけているわけ
ですが、ではどこまでわかっていれば「平均の意味を理解した」と言える
のかが疑問です。計算ができれば実用上の問題はあまりないでしょうし。
確かに平均を盲信せず、全体の分布の形やばらつきを考えるのは統計の
基本ですが、高校までの授業でそこまで扱っているのかなぁ。

まぁこの辺の話は大学入ってからイヤという程やるので、この段階では
理解していなくても大学でやってから忘れなければ困ることはないと思い
ます。

問題1-2

これは「命題が真なら対偶も真」「逆と裏は必ずしも真ならず」という
ことがわかっていれば問題なくできるはずです。
あんまり数学と関連づけて意識していない人が多そうな問題ですね。

問題2-1

「説明してください」なので数式を使って証明していいものかちょっと
迷いました。数式使えればすぐできますけども。
「偶数は2の倍数で、奇数は2で割ると1余る数。それらの和は2で
割ると1余るので奇数となる」とでも書けばいいのかな?
ただ数式を使って説明してもいいようでした。

問題2-2

放物線の特徴を述べる問題。頂点の座標と、他の1点が決まれば放物線
の式は決定できるので、特徴を3つ述べるのはハードルが高いなと思い
ました。
「頂点の座標」「x軸との交点の座標(2つ)」「y軸との交点の座標」
「上に凸」「その他放物線が通る点の座標」の中から3つ述べればいい
んでしょうかな。

問題3

これは難しかった。俺も10分ではできなかった上にすごく冗長な方法に
なってしまいました。
模範解答見てみましたが、ちょっとずるいと思いました。手順の5で
「点Dを通り線分BEに平行な直線を引く」と書いてありますが、これに
関する具体的な手順が明示してありません。俺が採点者ならここアウト
だな。(笑)
あと「作図は定規とコンパスしか使ってはいけない」「その際に定規は
線を引くことにしか使えない(長さは測れない)」というルール自体を
知らない人が多そうですな。

つーかですね。日経の記事では当初「定規とコンパスを使って直線を
3等分する方法を尋ねる問題」と記述してありましたよ。今は修正して
ありますけど。
直線と線分は数学的には全然違う意味でして、直線を3等分することは
不可能です。報道する側の数学力だってその程度なワケですよ。